cinkenzi

掌編小説

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本当にあったエライ話

大安吉日午前9時、棟梁の威勢のいい掛け声が青空に響き渡った。
「おおぃ、チョイスギ、バックバック、ライライライー 今だ、えれろ!」
棟梁の刻んだ梁や柱が、大工や鳶の手で寸分狂わず組み上げられていく。
カケヤが振り下ろされ、気持ちのいい音が響く。
「カーン、カーン、カーン、ズボッ!」

その様子を施主は感動しながら見上げていた。
今、夢にまでみたマイホームが形を成しつつある。


・・・何があったかは知らないが。
上棟後、棟梁と施主がケンカ。それもお祝いの席で。
はじめは些細な小競り合いだったらしい。
お互いに酒が入り、次第にヒートアップしたようだ。
とにかく僕が現場に駆けつけた時には、棟梁はサルグツワを噛まされ、たった今、自ら組み上げたばかりの新築の柱にロープでグルグルに縛りつけられ、ぐったりとうなだれていた。
小1時間ほど、獣のように唸っていたらしいが、体力を使い果たしたようで、今はおとなしくお縄についているという。

施主の話を聞けば、泥酔した棟梁がノコギリで柱をメチャクチャに切り刻んだとかで、この不届き者を皆で取り押さえ、柱に縛り付けたという。 
酒乱だとは聞いていたが、まさかここまでとは思っていなかったようだ。

酒乱という仮面を脱ぎ捨て、とうとう狂人の高みまで上り詰めた棟梁。 
めでたし、めでたし。 


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